疎遠になったままのお母さまがいらっしゃるのですね。
でも、結婚式という大事な日に、お母さまを呼ばなくていいのかな?と、気になっている。
それはつまり、お母さまに伝えたい思いがあるからではないでしょうか。
結婚式は、誰もが親御さまに対して“素直になれる”日です。
あなたの思いを、ご自分の言葉で伝えることができる日です。
「今まで育ててくれてありがとう」
「お父さん、お母さんのおかげで、私はこの世に生まれてくることができて、こんなに素敵な人と出会えました」
「私はいま、最高に幸せです」
どんな言葉にも、この日にしか伝えることのできない思いが詰まっています。
なぜなら、子どもとして、親御さまに感謝を伝える最後のチャンスなのだから。
逆に言うと、それぐらいの覚悟をもって迎えるのが、結婚式なのです。
ところで、あなたはなぜ、お母さまと絶縁状態になってしまったのでしょうか。
私なりに、これまでの経験をふまえて考えてみました。
親と子がすれ違ってしまうのは、愛しているからこそ
まず、子どもから親に対して不信感を抱く瞬間。
「気持ちを理解してくれなかった」
「ほめられた記憶がない」
「自分の人生にダメ出しされた」
どんな時でも、自分を愛してくれて、味方でいてくれると信じていたのに、愛が感じられなくて寂しかったのではないでしょうか。
でも、不幸せになってほしいと願う親なんて、この世にはいません。
あなたに幸せになってほしいから、間違った方向へ進んでほしくないから、口出ししてしまわれるのではないでしょうか。
次に、親から子どもに対して不信感を抱く瞬間。
「もっと頼ってくれればいいのに」
「親に相談もなく決めるなんて」
「成長した姿を見てうれしいはずなのに、どこか寂しい・・・」
親にとって、子どもはいくつになっても子ども。守るべき存在なのです。
もう、おわかりですよね。
どちらの場合も、愛しているからこそ、すれ違ってしまうだけなのです。
そして、その「すれ違い」を修復するきっかけを結婚式で作られた、ある母娘のエピソードをご紹介したいと思います。
お母さまに読んでもらえなかった“花嫁の手紙”
そのお母さまは、女手ひとつで新婦さまを育て上げられました。
新婦さまは、すでにご実家を離れて立派に独立されていましたが、結婚するにあたって、ある些細な、しかし大きなミスをしてしまいました。
お母さまに、彼を紹介せず、結婚の相談もしないまま、先に結婚式の日取りと場所を決めてしまったのです。
「ここで結婚式、するから」と、ある日唐突に娘から聞かされたときの、お母さまの悲しみは、ものすごく深かったと思います。
「なんで、たった一人の親である私に、相談してくれなかったんだろう・・・」
両家のお顔合わせは欠席。結婚式にも出席されるかどうか怪しくなってきました。
ことの重大さに気付いた新婦さまが、関係修復のための話し合いをしようと何度も試みたものの、お母さまはまったく応じてくださいません。
「母には、心配かけたくなかっただけなのに・・・」
そんな新婦さまの思いを背負って、結婚式の前日、お母さまにお電話をさしあげました。
すると・・・「明日は楽しみにしています。よろしくね」とのお返事が!
よかった!やっぱり母娘の絆って強い!と、ひと安心したのです。
ところが、結婚式当日。お母さまは、昨日とはまるで別人のようでした。
ずっと無表情のままで、ゲストの方々にもどこかよそよそしくて・・・そして、新婦さまが書いたお母さまへの手紙も、「読みません」と、きっぱりおっしゃったのです。
私は驚いて、でも勇気をふりしぼって、その理由をたずねてみました。
「こんな気持ちのままで読んだら、娘がせっかく書いてくれた思いを、私は素直に受け取れないから。それほど娘から受けた傷は深いんです。いつか、娘の思いを受け止められる日が来たら、そのときに読みたいと思います」
こう、私に打ち明けてくださいました。
お母さまはまだ、結婚の報告をしてくれなかったことに対してわだかまりが残っていたのです。
気持ちを整理することはできないけれど、結婚式に出席しないと娘に迷惑をかけてしまう。
でも、手紙を読めるほど落ち着いてはいない・・・お母さまも、すごく大変な思いをされてきたのではないでしょうか。
新婦さまは、お母さまと早く仲直りがしたいと焦っていらっしゃったので、私はお母さまの気持ちをそのままお伝えしました。
「そうですか・・・わかりました。焦らず、その日が来るまで、待ちます」
こうして、すれ違ったままだった母娘の間に、あたらしい道筋ができたのです。
結婚式は、ハッピーエンドではないと私は思います。
ハッピーエンドに向かうためのスタート、それが結婚式なのではないでしょうか。
だからどうか、絶縁状態だからといって、お母さまを結婚式に招待するのをためらわないでください。
世界でたった一人のお母さまです。
心のどこかで、あなたもお母さまも、関係修復したいと願っているはずです。
むしろ絶縁状態だからこそ、今までの確執を捨て、あたらしい親子になれるチャンス。
このチャンスを逃す手はない、と私は思いますよ。
そして、もし可能であれば、私にもその想いを聞かせてください。
私達ウエディングプランナーは、おふたりの人生に踏み込む覚悟を持って、結婚式に携わらせていただいています。
あなたの人生を、ウエディングプランナーに賭けてみてください。
必ず幸せに導きます。
尾家 瑞紀 Oie Mizuki |
ブライダルの専門学校を卒業後、新卒入社。就職活動中、内定をもらっていた会場を蹴ってバリューマネジメントの人事担当者に直談判し、繰り上げ最終面接ののち入社、という異例の経歴をもつ。「正解でした。専門学校時代の友人のなかで、私がいちばん仕事を楽しんでいると思います」。神戸にある2会場で経験を積み、現在、神戸迎賓館のチーフプランナー。
バリューマネジメントグループ